道をひらく 松下幸之助著
世間というものは
世間というものは、きびしくもあるし、また暖かくもある。
そのことを、昔の人は「目明き千人めくら千人」ということばであらわした。
いい得て妙である。
世間にはめくらの面もたくさんある。
だから、いいかげんな仕事をやって、いいかげんにすごすことも、時には見のがされてすぎてしまうこともある。
つまりひろい世間には、それだけの包擁力があるというわけだが、
しかしこれになれて世間をあまく見、馬鹿にしたならば、やがては目明きの面にゆき当たって、身のしまるようなきびしい思いをしなければならなくなる。
また、いい考えを持ち、真剣な努力を重ねても、なかなかにこれが世間に認められないときがある。そんなときには、ともすると世間が冷たく感じられ、
自分は孤独だと考え、希望を失いがちとなる。
だが、悲観することはない。
めくらが千人いれば、目明きもまた千人いるのである。
そこに、世間の思わぬ暖かさがひそんでいる。
いずれにしても、世間はきびしくもあり、暖かくもある。
だから、世間にたいしては、いつも謙虚さを忘れず、
また希望を失わず着実に力強く自分の道を歩むように心がけたいものである。
今日は「世間というものは」です。
仕事人生なかなか簡単に上手くは行かないことが沢山あるように思います。
いくら努力しても世間が認めてくれない時期や、適当にやっていてもなんとなく上手く行く時期もあるのかなと思います。
しかし、本当の意味で、世間の人々の評価は、やはり最終的には公平で正しい評価を下してくれると信じることが大事だと思います。
瞬間瞬間を捉えると公平でないように思える事も、じっと我慢してひたむきに努力を積み重ねていれば必ず自分自身にスポットライトが当たる時が来ます。
一時期の世間の評価を一喜一憂するのではなく、「ウサギと亀」の話のごとく地道に自分の努力を積み重ねていれば見る人がみれば必ず正しい評価を下してくれると信じて前進することが大事だと思います。
そのような意味でお客様の評価はやはり最終的には正しいのだと思います。
「すべての人を、少しの間欺くことはできる。一部の人を、ずっと欺くこともできる。しかしすべての人をずっと欺くことはできない」
これはリンカーンの言葉です。
松下幸之助 仕事には哲学をもて
仕事を与え、実験させて人を育てる
人を育てるというのは大事だけれども、実際には、実習させにゃいかん。練習は仕事と一緒ですわ。実験させなきゃいかんですな。仕事を与え実験させていると、人は育っていくんですよ。それで一人の人間が育てば、これは大きな宝ですよ。(「マネジメント」昭和五十二年三月号)