道をひらく 松下幸之助著
一人の知恵
おたがいに神さまではないのだから一人の知恵には限りがある。
それがどんなに偉い人であってもやっぱりその人一人の知恵には限りがある。
こんな限りのある知恵で長い人生を歩み広い世の中を渡ろうとするのだから、
ともすればあちらで迷いこちらでつまずく。
自分一人ですむことならそれでもまたよいかもしれないがこの世の中に住むかぎり、
人々はみなつながっているから自分がつまずけば、他人も迷惑をする。
他人に迷惑をかけるくらいなら一人の知恵で歩まぬほうがいい。
わからないことは聞くことである。
知らないことはたずねることである。
たとえわかっていると思うことでももう一度人にきいてみることである。
「見ること博(ひろ)ければ迷わず。聴くこと聡(さと)ければ迷わず」 という古言がある。
相手がどんな人であろうと、こちらに謙虚な気持ちがあるならば 思わぬ知恵が与えられる。
つまり一人の知恵が二人の知恵になるのである。
二人が三人、三人が四人。
多ければ多いほどいい。衆知を集めるとは、こんな姿をいうのである。
おたがいに、一人の知恵で歩まぬよう心がけたいものである。
今日は「一人の知恵」です。
知恵というのはどちらかいうと、一人で出すものと考えがちですか、私達は組織を運営しています。
もちろん自分の知恵を絞り行動することは基本的に大事なことなのですが、
それがあっているのかどうなのかと言うと甚だ疑わしいと思っていないと間違った行動を起こしてしまいがちです。
戦国武将の毛利元就が言われたと言う「一本の矢は簡単に折れてしまうが、三本の矢は簡単には折れない」いわゆる、3人揃えば「文殊知恵」と言う言葉があります。
一人よりも二人、二人よりも三人の知恵の方がいい場合が多くあります。
組織は「凡人をして非凡な事をさせる」事につきます。
そのためには一人の平凡な考えを、何人かで非凡な考えやアイデアに変えていく必要があります。
「見る事広ければ迷わず、聞く事聡(さと)ければ惑わす」と書かれている通り、多くの人が集まって広くものを見、広く人の意見を聞く事がとても大事です。
だだし、同じ意見の人が三人集まっても一人となんら変わらないことも知っておくべきです、違う角度から色々な意見を出せる組織が素晴らしい仕事が出来る組織なんだと思います。
唯我独尊ではなく、みなの衆知を集めれる組織になりたいものです。
松下幸之助 仕事には哲学をもて
技術者の自己研鑽(けんさん)が大切である
技術の向上向上の基本をなすものはいろいろありましょうけれども、やはり何と申しましても、技術者が、みずから研鑽する、みずからを養成するという強い心構えを持つことが大切だと言うことであります。すなわち、技術者の自己研鑽、いいかえますと自修すると言う自覚こそが、真の技術向上の大きな基本をなすのでありまして、そういう自覚なり向上心が強ければ、それを助成する機関というものは、昔と違って今日は、あらゆる面に存在しているのであります。(昭和三十四年一月十日・松下電器経営方針発表会)