道をひらく 学ぶ心

道をひらく 松下幸之助著

目次

学ぶ心

自分ひとりの頭で考え、自分ひとりの知恵で生みだしたと思っていても、本当はすべてこれ他から教わったものである。
教わらずして、学ばずして、人は何一つ考えられるものではない。幼児は親から、生徒は先生から、後輩は先輩から。そうした今までの数多くの学びの上に立ってこその自分の考えなのである。自分の知恵なのである。だから、よき考え、よき知恵を生み出す人は、同時にまた必ずよき学びの人であるといえよう。
学ぶ心さえあれば、万物すべてこれわが師である
語らぬ木石流れる雲無心の幼児先輩のきびしい叱責後輩の純情な忠言、つまりはこの広い宇宙、この人間の長い歴史、自然の理法がひそかに脈づいているのである。そしてまた、人間の尊い知恵と体験がにじんでいるのである。
これらのすべてに学びたい。どんなことからも、どんな人からも、謙虚に素直に学びたい。すべてに学ぶ心があって、はじめて新しい知恵も生まれてくる。よき知恵も生まれてくる。学ぶ心が繫栄へのまず第一歩なのである。

今日は「学ぶ心」です。

私たちが今考え行動している原点は、今までに教わった事や学んだことを知識に変えて発言したり行動しています。
しかるに、教わる事や学ぶことを止めてしまうと考え方や行動が進化しないわけです。
 では、どう学ぶか?というと学ぶ気さえあればどんな場所でもどんな時でもできるのです。
昔父親に教わった「泥棒にも三分の利」という言葉があります。どんな人でも必ず良いところがある、どんな人と付き合っても必ず学ぶことができると教わりました。その人がどうなのかではなく、自分の聴く姿勢や学ぶ姿勢が大事なんだということだと子供ながらに思い50年実践して来たように思います。
だから、私はどんな人でも好き嫌いなくお付き合いできますし、学ぶ姿勢を忘れずにその方の良い部分を参考に自分を変化させてきたつもりです。いま、会社で学びの応援をしています。謙虚な気持ちでそれを利用し、学びの楽しさを理解し、自分自身の繁栄につなげてもらえたらと切に願います。

松下幸之助 仕事には哲学をもて

周知を集める事業部制

松下電器は周知を持って仕事をしようということを創業早々考えて、誰でも意見の発表がしやすいようにやってきたと思うんです。そうでありますから、十五、六の小僧さんにしても当時は遠慮なくものを言いまいした。「大将、これはこうしたらどうですか」というようなことを、少数の人間でもありましたし、常に言えたんです。「それはそうした方がええな」ということで、それをよく採用したこともあって、全員の才覚によって仕事をしてきたというのが、松下電器の当初の姿であったと思うんです。事業部制ということも結局そういうところから出発した一つの制度であります。だんだん人数が多くなりまして、大きな団体になってくると周知を集めると言ってもなかなか困難でありますから、周知を集めてやるというかたちを、一つの部門でその長を中心としてやってもらう。一つの事業部が事業部長を中心として周知を集めてやるんだということでやってきた。それが幸いにして効果があったとでも申しますか、今日の発展をみたのであります。(「昭和三十九年十月二十六日・松下電器幹部社員への講話)

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