道をひらく 松下幸之助著
心を通わす
古人曰く、人生はあざなえる縄の如し。
まことにこの世の中、長い人の歩みのなかには、よいこともあればわるいこともある。
うれしいことあれば悲しいこともある。
そして、よいと思ったことが実はわるくて、わるいと思ったことが実はよくて、
つまりあれこれと思いまどうことは何もなくて、はじめから素直に謙虚に歩んでおればそれでよかったと、人の知恵の浅はかさに、いまさらのように胸打たれることがしばしばある。
はじめからしまいまで徹底的にわるいということもなければ、また徹底的によいということもないのである。
それでもなお人は、わるいと思うときには自分で自分の心を閉ざし、よいと思うときにはまたおごりの心で人をへだてる。
心を閉ざし、人をへだて、心と心とが通い合わぬ姿からは、おたがいに協力も助け合いも生まれてはこない。
心ひらかぬ孤独の人びとばかりになるであろう。
有為転変のこの世の中、よいときにもわるいときにも
いかなるときにも素直に謙虚に、おたがいに心を通わし思いを相通じて
協力し合っていきたいものである。
今日は「心を通わす」です。
毎日生活をしていると、良い時も悪い時もあります。個人的にはそんな時思い出す言葉に「失意泰然」や「泰然自若」などの言葉でやり過ごしています。
組織の中では、悪い時には悪い時でお互いを励まし合い前進し、良い時には良い時でお互いに天狗になるのではなく、さらなる高みに登るため着実に前進する必要があるかと思います。
良い時にも悪い時にもそれぞれ組織運営にはチャンスがあります。しかし、それを行うには、お互いに心を通わせ、思いを一つにしないと何事も上手くいかないんだろうと思います。
松下幸之助 仕事には哲学をもて
人間は無限の可能性を秘めている
人間というものは、本質的に万物の王者と言ってもいいほどに偉大な存在ではないかと私は考えている。いいかえれば、無限の発展の可能性を持っているのが人間だと思うのである。
そういう観点に立って、自分を生かし、他の人を生かし、万物いっさいを活用していくことが、人間としての使命であり、それが人間には可能だということである。人を厳しく鍛え、育てることが大切なのも、人間が本質的にそのような偉大な存在であり、無限の可能性を内に秘めているからである。(「人事万華鏡」〈PHP研究所〉昭和52年9月)