道をひらく 松下幸之助著
こわさをしる
こどもは親がこわい。
店員は主人がこわい。
社員は社長がこわい。
社長は世間がこわい。
また、神がこわい。仏がこわい。
人によっていろいろある。
こわいものがあるということは、ありがたいことである。
これがあればこそ、かろうじて自分の身も保てるのである。
自分の身体は自分のものであるし、自分の心も自分のものである。
だから、自分で自分を御すことはそうむずかしいことでもないように思われるのにそれが馬や牛を御すようにはなかなかうまくいかないのが人間というものでいにしえの賢人も、そのむずかしさには長嘆息の体である。
ましてわれわれ凡人にとってはこれは難事中の難事というべきであろう。
せめて、何かのこわいものによって、これを恐れこれにしかられながら、自分で自分を律することを心がけたい。
こわいもの知らずということほど危険なことはない。
時には、なければよいと思うようなこわいものにも見方によっては、やはり一利があり一得があるのである。
今日は「こわさをしる」です。
人間の成長にはとなりで怒ってくれる人が必要です。
怖いものがないのにこしたことはないのかもしれませんが、それでは自分勝手な人間になり、時には間違った道に行ってしまうことになりかねません。
社長を長くやっていると怖いものがなくなり傲慢になりがちです。そんな人を沢山見てきました。
やはり社長と言えども怖いものは必要です。
会社の中では皆さんの目であり、お客様の声であります。これには怖さを感じていないと自分を律することができません。また、家庭では家内です(笑)わたしも人間なので時には休みたい時もあります。よっぽどでない限りそんなセリフを言えば家内に叱られます。
決め台詞は「そんな真面目でない社長の下で働きたくない」です。このセリフは効きます(笑)家庭では家内が社長です。そうしておくことによって自分を律することができると常々思います。
皆さんも会社内や家庭内で誠実に怒ってくれる人をあえて持っておくことが必要なんではないでしょうか?その少しのプレッシャーが自分を律する方法のように思います。あえて怖い人に近づき、その怖さを自分の行動や言動、態度が間違っていないかを見てもらえる指標にしておくことが、自分が間違っていないかを確認できる方法でもあるのだと意識されて見てはいかがでしょうか??
松下幸之助 仕事には哲学をもて
組織の官僚化は経営の最大の敵である
組織が官僚化すれば、パイプがつまって下部の意見が上部へ通らなくなるし、何よりも仕事の能率が下がってしまう。したがって経営者たるものは、絶えず目を光らし、組織を引き締めないといけない。(「山陽新聞」昭和五十四年四月二十一日)