道をひらく 身にしみる

道をひらく 松下幸之助著

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身にしみる

一生懸命にやっていたつもりでも、何かのキッカケで身にしみる思いをしたときには、今までの一生懸命さがまだまだ足りぬことに気がつくことが多い。
身にしみるということは、尊いことである。ありがたいことである。
ものごとをキチッと誤りなくなしとげるためには事の大小を問わずそこにやはり身にしみる思いというものが根底になければならないのである。 

今日、小さなビル一つ建てるのに、文明の利器をフルに利用しても一年半はかかる。
ところが、あの豪壮華麗な大阪城が、諸事不便なあの時代にわずか一年半で築造されたという。
その大業の根底には、築造に従事した人々にヘタをすれば首を切られるやり通さなければ首がとぶという命をかけた真剣さがあったのである。
そのことのよしあしは別として命を失うかもしれないということほど身にしみるものはない。

おたがいにともかくも、きょう一日の仕事をつづけている。
ともかくも一生懸命であろう。
しかし今一度、ほんとうに身にしみる思いで自分の仕事をふりかえってみたい。

今日は「身にしみる」です。

戦国武将の武田信玄の言葉に、
実力の差は努力の差
実績の差は責任感の差
人格の差は苦労の差
判断力の差は情報の差
真剣だと知恵が出る
中途半端だと愚痴が出る
いい加減だと言い訳ばかり
本気ですると大抵のことはできる
本気でするから何でも面白い

本気でしているから誰かが助けてくれる という私の好きな言葉があります。
やはり人生の中で一度や二度命がけでことに当たることは必要なんじゃないかと思います。
私も何度かそのような経験をしています。それを乗り越えた時に見えてくるものがありました。
それは自分のためでなく守るべき自分の愛する人のためならさらに素敵だと私は思います。
その経験はやはり遊びからは生まれてきません。遊びは「命まで取られないから」と言う言葉の方が合うように思います。
もちろん仕事でも命まで取られたらたまったものではありません。しかし、そのような境地に立って物事に当たると言う経験ができるのはやはり仕事だけだと思います。
自分の守るべき人のために「身にしみる」思いで、事に当たる! そんな素敵な人間に人生で一度や二度は経験されてもいいのではないかなって思います!

松下幸之助 仕事には哲学をもて

一人の目覚めは全員の目覚めに通じる

皆さん自身が、自分の力をどれほど信じているか。自信なきものは、非常に私は乏しいものがあると思います。しかし過信の人はまた危ないのであります。正確に自分自身というものをみつめて、”自分の今の力は85%に達している。これを1年の間に90%にもっていこう。さすれば、必ずこういうこともできるだろう”という、自分で自分の目標をつくっていただきそれに向かって邁進していただく。
その邁進の過程には人をも動かすということになりますから、自分が85%の点数から90%になる過程には、はたに強い影響を与える。”何々くんはああいうように勉強しているが感心だな”ということが、知らず識らずに響いて、隣の75点の人を80点にするということです。「一人出家すれば九族天に生まれる」という言葉のごとく、一人の目覚めは全員の目覚めに通ずるということであります。(昭和四十八年一月六日・松下電器在阪技術担当責任者対象講話会)

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