道をひらく 松下幸之助著
己を知る
戦いはまず敵を知ることから始めよ,とはよくいわれることである。太平洋戦争においてわが国が負けたのも,米国の力をよく認識していなかった,相手をよく知らなかったからだといわれている。それもたしかに一理あろう。大事なことである。
しかし,敵を知る前に,本当は,もっと大事なことがあるのではなかろうか。
それはつまり,まず“己を知る”ということである。己をかえりみるということである。
敵を知ることもむつかしけれども,己を知るということは,もっとむつかしい。
しかし,敵を知らなければ,勝負は定まらないとしても,己を知らなかったら,戦いには必ず破れる。連戦連敗,その敗因はわが身にありである。世事万般,これと全く同じことがいえると思う。みずから不都合を生み出している場合が,案外に多いのである。
敗因われにありという悔いをおたがいに残さないために,己を知る心がけを,いかなる場合も失いたくないものである。
今日は「己を知る」です。
孫子の有名な言葉に「他を知り己を知れば百戦危うからず」がありますが、仕事も同じで、お客様をよく知りその上で自分のことをしっかりと知ることが商売の基本なんだと思います。
人間誰にでも長所と短所があります。自分の長所と短所をしっかりとまずは知ること、そののち、長所は伸ばしてあげ短所は無くしてあげることを日々心がけて実践することが己の成長にとって大事なことです。
評価には3つあると言われています。
甘い自分の評価
辛い他人の評価
そして、本当の評価です。
甘くなりがちな自分の評価を本当の評価に変えるためには、自分をよく知ることです。何が得意で何が不得手なのかをしっかりと自己評価し不得手が欠点にならないよう改善を加えて行くべきなんだと思います。(2024年加筆)よく市場の3Cの話をしますが、市場には自社(Company)とお客さま(Customer)と競合他社(Competitors)しか存在しません。そう言う意味では、まず自社や自己のことを知ることはとても重要なことなのです。
松下幸之助 仕事には哲学をもて
一人ひとりが自分の仕事を一つの経営と考える
どのような小さな仕事もそれが一つの経営なりと考える時には、そこにいろいろ改良工夫をめぐらすべき点が発見され、したがって、その仕事の上に新しい発見が生まれるものである。世間すべての人々が同じように努力しながら、成功する人はまれであるのは、今言うところの経営の観念がかけ、何らの検討工夫をなさず、ただ仕事に精を出しているに過ぎないからである。(昭和八年十二月十六日・松下電器社員への講話)