道をひらく 松下幸之助著
手を合わす
うどんの値段は同じであっても、客を大事にしてくれる店まごころこもった親切な店には、人は自然に寄りついていく。
その反対に、客をぞんざいにし、礼儀もなければ作法もないそんな店には、人の足は自然と遠ざかる。
客が食べ終わって出て行く後ろ姿に、しんそこありがたく手を合わせて拝むような心持そんな心持のうどん屋さんは、必ず成功するのである。
こんな心がけに徹したならば、もちろんうどんの味もよくなってくる。
一人ひとりに親切で、一ぱい一ぱいに慎重で、湯かげんダシかげんにも、親身のくふうがはらわれる。
そのうえ、客を待たせない。
たとえ親切で、うまくてもしびれが切れるほど待たされたら、今日の時代では客の好意もつづかない。
客の後ろ姿に手を合わす心がけには早く早くという客の気持がつたわってくるはずである。
親切で、うまくて、早くて、そして客の後ろ姿に手を合わす -
この心がけの大切さは何もうどん屋さんだけに限らないであろう。
おたがいによく考えたい。
今日は「手を合わす」です。
お客様の後ろ姿に手を合わすと書かれています。
私が25歳ごろに初めてパナソニック(当時は松下電器)の工場見学に行った時のことです。
工場を出てタクシーに上司と乗って松下電器の方のお見送りで帰るとき、当時の上司が曲がり角の手前で「バックミラーを見て置きなさい、必ずあの人たちは私達の車が曲がる手前で頭を下げますから」といわれました。
本当にそんなことをするのかな?とまだ若い私は半信半疑でしたが、車が曲がる瞬間に工場前でお見送りしていた人全員が頭を下げてられました。
その瞬間に私は松下電器と言う会社のファンになりました。
JKでも本社前までお見送りに行った時には必ず曲がり角までお得意先が行かれるまで立っていて、曲がる時に再度頭を下げて感謝の気持ちを表すように昔からしています。
(皆さん知っていましたか?)
今でもしっかりとした会社は必ずそのようなお見送りをしていると思います。
お客様への感謝の気持ちをきちんと持っていれば、おのずと商品やサービスに心がこもってくるはずです、そんな人間や組織になることが商売人の心がけではないかと思います。
松下幸之助 仕事には哲学をもて
工場に入ったとき何を感じるか
工場の作業場へ入って、なんとなしに響いてくる音、雑音が、それが正しい雑音であるかどうか、キチッと仕事ができている雑音であるかどうか、不良品ができている雑音であるかどうか、というようなことがわかるかわからないかということです。それがわからないようなことでは、私はあまり偉そうに言えないと思うんです。(昭和四十八年一月六日・松下電器在阪技術担当責任者対象講和会)